[163] ハイパーレスキュー2010/04/12 00:46:24

訓練の様子

レスキューの世界…

もう先月の話になりますが、東京消防庁第八消防方面本部消防救助機動部隊を見学することができました。ハイパーレスキューとも言われる精鋭部隊で、平成16年10月の新潟県中越地震の土砂崩れで男児を救出した姿が記憶に残っている方も多いでしょう。

東京消防庁

ちょっと話はそれますが…。警察組織が基本的に都道府県単位(例えばパトカーには「○○県警察」と書かれています。ちなみに「東京都警察」が「警視庁」で「警察庁」は国の組織。)ですが、消防は市町村が基本「大阪市消防局」とか、「横浜市消防局」といった具合で、「大阪府消防庁」や「神奈川県消防庁」みたいな組織はないのですが、東京には「東京消防庁」があって、(ごく一部を除く)ほぼ東京都全域[注]を対象としています。都道府県警察でも、警視庁(東京都警察)は他の道府県警察に比べて組織が大きく、警視総監(警視庁のトップ)は道府県警察本部長よりも上の階級ですが、消防の場合、東京消防庁の組織・総合力は全国の中で際立っている(消防職員数は約18,000人)ということです。そして、その東京消防庁の中でも、今回見学できたのは本当に選び抜かれた精鋭部隊で、日本最高のレスキューを見られたと言ってよいでしょう。

[注]島しょ地域と東久留米市、稲城市を除く区域が管轄でしたが、2010年4月1日からは、東久留米市も東京消防庁に事務委託となりました。
参考:
東久留米市消防事務受託に伴う東京消防庁東久留米消防署の開署等について
東京消防庁に東久留米市も=35年ぶり消防事務受託

航空隊…

今回、見学した第八方面本部は立川基地に隣接していて、ここには東京消防庁航空隊があります。航空オタの私としては、こちらも見学できて大感激 前述のように島しょ地域は管轄外ですが、伊豆諸島からの救急要請に24時間体制で対応しています。この日の朝も既に島しょや奥多摩などへ出動したそうです。

それにしても、日常からヘリを整備し、常に運航可能な状態を確保するのは大変なことだと思います。例えば、2008年7月の洞爺湖サミットでは、急病人が発生したものの、霧のたちこめる悪天候に見舞われ、このような悪条件でも飛行可能な東京消防庁のスーパーピューマ「ひばり」に計画外の出動要請がなされたとのこと。これが無ければ「スムーズな搬送は不可能だった」と書かれています。

なお、航空オタとしては、ヘリの登録記号も見どころ。東京消防庁航空隊のヘリ7機(1機は総務省消防庁から委託)にはJA119A、JA119B、JA119E、JA119Yと「119番」登録が確認できただけでも4機。なんか、いいです…。

訓練…

地上高く吊られたヘリコプターのモックアップから降下して救助する訓練では、施設内にヘリの擬似音が大きく鳴り響きます。現場では、ヘリの音に遮られて言葉では意思疎通ができません。大きな身振り・サインで互いのコミュニケーションを図ります。僅かなミスが救助に向かった自分たちの二次災害を招きかねません。そんなことはプロとして決してあってはならないこと。訓練もいつでも真剣勝負です。

ガレキに埋もれた救助の訓練では、隊員たちの現状報告に対しメガホンと指揮棒を持った責任者(小隊長でしょうか?)が次々と指示を出し、救助活動が行われます。ここでも的確な指示と相互のコミュニケーションが重要。緊迫した訓練は迫力があり、思わず手に汗を握りました。

現場の話…

現場で実際の救助活動をする隊員たちも大変です。もしかすると命を落とすかもしれません。消防職員の妻は「前日の夜、どんなに激しい夫婦ケンカをしても、夫を翌朝職場に送り出す時には必ず『いってらっしゃい』と挨拶する。」という話を聞きました。送り出した夫は、次に家に戻ってくる時は「白い小さい箱」に入っているかもしれない…。もちろん、誰にだって確率ゼロではない話ですが、フツーの職業の人に比べて遥かに確率は高いわけです。

そして、その隊員に突入などを指示する指揮官、隊長も大変です。自分の命令いかんで、部下の大切な命を奪ってしまうかもしれない。その部下には、妻も子供もいる…。例えば、小さい子供が閉じ込められた災害現場には、同じような年の子供がいる隊員を敢えて突入させない…なんてことも考えるそうです。自分の子供に対する感情とダブり、ついつい限界を超えて無理をしかねない。そんな配慮まで出来るのは、日常の厳しい訓練などを通じて培われた信頼関係あってこそ…。

「助けを求める人がいれば、その人の国籍・職業など一切関係なく、とにかく助けに行くんだ」という気概で仕事をしている。そんな人たちも、大規模な災害現場ではトリアージなどの苦汁の判断を強いられます。埋もれている家族を助けて欲しいと懇願されても、生体反応が無ければ次の現場を目指さないとならない。助けられる命を優先する、そんな説得も辛いものがあるとか…。

東京以外への協力…

小さな規模の市町村では、市町村の消防の広域化が求められています。また、東京消防庁では、前述のようにその圧倒的な組織力から、管轄地域内に限らず国内外への活動にも協力しています。

終わってみれば、私たちの生活を身を挺して守る人々の日々の努力と心意気に改めて魅せられました。この場をお借りして、関係者の皆様に深く感謝いたします…それにしても消防ってマジ、スゴいです…消防オタクにもなっちゃうかも